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半袖シャツがしまいきれない陽気を引きずり、衣替えの季節に突入

 シカは、春先に生え変わって先端が丸かった角が、秋になるとエッジの効いた角に変化する。ペンギンの羽もすっかり生え変わったみたい。
http://www.tokyo-zoo.net/index.html
9月に入ったら、若手作家たちがぐんと面白くなっていた。

 8月末に高円寺にオープンした無人島プロダクション。
http://www.mujin-to.com/
元ミヅマアートギャラリーで経験を積んだ藤城里香さんと音楽ライターの妹沢奈美さんの2人が始めたスペースで、オフィスの横に展示空間をしつらえている。展覧会だけにこだわらず、DVDの制作やイベントなど、それぞれのアーティストやそのときどきに合った媒体を選んで手がけていくそうだ。
「無人島にレコードをひとつだけ持って行けるとしたら何を持って行く?」というのは音楽好きの酒の話題みたいなもので、つまり無人島レコードといえば、実用的な食料よりこれがありゃ、という敬愛を表している。

 第一弾となった八木良太展は、京都在住の作家ということもあり、会期を2期に分けて1期はこれまでの作品を紹介し2期で新作を発表するという、制作時間に余裕のある構成。現場を知るスタッフならではの智恵である。アーティストといえど締め切りは守るべしと私は思っているけれど、出産予定日がズレてしまう場合もあるからね。
 1期では、レコードの溝をシリコンで型取って精製水を凍らせた氷のレコードをプレイヤーで再生するという、Aランチでも話題になった作品がよかった。ショパンのノクターンなどが聴こえてくる。氷の出来具合と溶けていく間にノイズ雑じりであったり、同じフレーズを繰り返したりするのもまた良し。物体は1回で消失し、また同様に型を取って再生することもできる。

《VINYL》2006

 現在開催中の2期では、レコードの回転をろくろとして利用した作品を展示していて、ヘッドホンからはその制作時に実際に再生された音楽がドゥワ〜ンとか妙な歪みを交えながら流れて来る。3枚のレコードは溝の幅が違い、つまり陶(焼かずにそのまま乾燥)はそれぞれ異なる時間のかたち。波打って回転するしなりや指の動きが、「時間」を触覚的な感覚を伴う視覚や聴覚で感じさせ、エロティックでもある。

《Portamento》2006  左からシンセサイザー、ホーミー、ヴァイオリン

《Portamento》より

 ほかにも時速300kmの新幹線がすれ違う瞬間を撮った写真、日光写真の要領で透明のレコード盤を青焼きした作品など、「時間」と「音楽」の研究室を、研究者の留守の間に覗いたみたいだった。


 駅前にはタイムスリップしたような古本屋があり、線路のレールが金色にくねっていた。




 音楽と美術の両方で表現する作家というのは昔からいるのだが、タケフロhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~tailgate/
で「オカメプロ展」を開催中の田尾創樹は、ロンドンで学びながらも大竹伸朗のパンクなカッコ良さとも違い、田中偉一郎のフォークの湿った感じはありつつも皮肉さはない、独特の持ち味がある。

オカメプロ展より

 オカメプロとは、絵画もCDもTシャツなどのグッズもつくっちゃう複数のアーティストが所属するプロダクションらしいが、ほとんど自作自演とかユニットだ。私が買った「北海の泣き男」太頭丸山(たずまやま)のCDでは、相撲取りらしくブルージーな歌声で、雨の日に部屋でつぶやく孤独な男女のデュエットを自演したりもしていて泣けてくる。



 ブードゥー教状態のぬいぐるみや無造作に絵画を掛けた、ローカル色+ちょいおしゃれなインスタレーションは、パリやニューヨークでもひょっとしてイケるのではと思ったり。ペインティングもドローイングも技術やセンスがあってのこれで、引きこもっていくらでもつくれる作家だということがわかる。四畳半的ながら実は和風でもない。引きこもりでいて流浪の民。ドローイングはまだ増えそうだ。恵比寿といえど、猫ものどかに散歩するような場所だ。




 GEISAIで注目され、マジカルアートルームで展示中の山口聡一展。
http://www.magical-artroom.com/
ヴィヴィッドな配色や装飾性は、サイケデリックで軽快。注射針で細かいドットを打っていて、かたちの輪郭はそれぞれのエリアの境界のように盛られ、左右対称のようでいて微妙に違う。
 最近は、輪郭をぼかして中間的な領域を示す作家と、日本画やぬり絵的に輪郭をくっきり出す作家とがいるけれど、いずれにしてもつるつる均一なフラット感ではない、でこぼこ異質なもの同士の響き合いをめざしているようだ。
 絵は壁に架けられてはいるが、上から宇宙に浮かんで風景を見ているような気にもなる。(もしかしたら必ずしも必要ないかもしれないけど)透明のアクリル板に描いた絵を透過して重層的に見えるようにもなっている。

作家と「MORE THAN PARADISE」展示風景

 花のような性器のようなかたちは、ピンクフロイドの「ザ・ウォール」のアニメーションみたいに脅迫的な描き方もあるんだろうけど、これには全然悪意を感じない。印刷やPCで見るのと違って、なにか幸福感さえある。

《トウィンクルトウィンクル》2006

部分


 日曜は、ICCで「アートのオープンソースは可能か」というためになるシンポジウムを聞いた後、原美術館http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html
の庭で高野寛、原田郁子、伊藤ゴロー、坂田学、青柳拓次らオールスターズのライブでのんきに過ごした。昼には子ども達がマラカスをつくるワークショップをやっていて、ひとりの美少女もバンドに参加。永積タカシもスーパーバタードック再結成ライブ@野音を終えて、ファンキーに駆けつけて来た。秋の虫もハモり、植物のつるも踊っていた。この前は、奈良美智+glafの上映会があったし、原美術館の庭の大木は、いろんな音が聴けていいねぇと思った。

「リズムで遊ぼう」夜の部 


最近よく聴いているCD。試聴してよかったら買うだけで、イクゼ、オンガク!くわしいぜとかじゃないんですが。秋に合います。

UKポストロック epic45『slides』http://www.linusrecords.jp/recommend/2006/0811/

ブルックリン在住グリズリーベア『YELLOW HOUSE』http://www.hmv.co.jp/search/artist.asp?artistcode=000000000327636

約3年半ぶりのニューアルバム ヨ・ラ・テンゴ『I AM NOT AFRAID OF YOU AND I WILL BEAT YOUR ASS』http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1264993






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