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穴ゆけば。行けるかな?

 先日、飛行機に乗ったら寄席チャンネルで、二代目桂枝雀師匠が生前にオーストラリアで行った落語公演『替り目』が流れてきた。枝雀師匠は落語を翻訳して海外公演も行った人(映画『ドグラマグラ』の主演もしている)で、日本語混じりで落語とは「ワン・ルール & イマジネイション」(アクセントつけて)なんだと言う。ルールとは「アナザー・パーソンを想像すること」。「おい、誰に向かって言ってんだい、気でもおかしくなったか、なんて言っちゃあいけません」。


 もうひとりの人を想像する……。カフェギャラリーappelの最後の展示となった「原美樹子写真展 Humoresque」http://www.bit-rabbit.com/p1new.html
では撮り手の存在を想像させる。特に、電車のなかで虚ろな人を撮った写真など、抜き差しならない距離でドキドキする。セッティングしてから瞬間カメラを向けるらしいが、斜めになったり、手前が白っぽくなっていたり、技術があるのに初心者的な動揺を残しているからか、はらはらさせられる。

この作家は、他者に土足で踏み入るほど無神経ではないし、人なつこいわけでもない。劇団で女優をやっていたから度胸はあるのだろうと想像するが、目の前の物事へのまぶしさや好奇心が発動して意を決する瞬間が写真の粒子に混ざっているような気がする。情熱と非情さと。


ところで5年の活動を終えるappel。運営するアーティスト/デザイナーユニットBit Rabbit(tattaka+泉沢儒花)は、お茶を飲みながらアートに触れるという場にして、作家の自覚/無自覚にかかわらず、こうしたアートの非情さをも取り上げてきたように思う。若い作家が多かったせいかちょっと声が弱かった気もするけれど。出版は続けるそうだし、最後にライブがドドッとあります。

会場風景



アートで元気が出るというのは、抜本的なところをくぐり抜けた後のことで、やっぱりこわいし覚悟がいる。森美術館でビル・ヴィオラ展
http://www.mori.art.museum/jp/index.html
を見ても思ったけど、小金沢健人の個展「数を忘れる」
http://www.hiromiyoshii.com/
でもそう思った。この漂流感覚は、薄闇のなかで心地よいけれど、ものごとを認識するためにこれまでの人生で培って来た「文字(言葉)」とか「数字(数式)」とか自分が自分であるということさえも いったん忘れてしまうということだから。

《hot ant》2006

人に伝える時に「ほら、あれなんて名前だっけ?」とか、スーパーで「冷蔵庫に卵いくつ残ってたっけ」とか、物覚えが悪い、記憶力が落ちる、数え間違えるの三拍子はよくあることだけど。道路を歩いていて、ここにいる人たちもクルマも全部ほんとうはつながりなく、地球の表面にいるだけだと気づいたときに愕然として、いつ糸を離されるかわからない凧になるようなものだ。と同時に他者とのつながりなく自分がいるということもない

《untitled》2006

小金沢作品でいつも背中を押されるのはユーモアで、不可解なドローイングとか、ネオンのちょっとしたかわいさとか、改造扇風機がひょろひょろと“舌”を出したりして「何者だ?」と思うときとか、ちょっと安心するところがある。得体がしれないものはこわいけど魅力的だし。海面反射のようなミラーボールの部屋は、時間とかどこにいるかとかホントに忘れる。自然のなかに矩形はないというけど、この前直島の海で矩形の銀紙が折り重なったような反射を見たばかりだった。

《宇宙の撹拌 Stir of universe》2006

社会復帰ができなくなりそう。ちょっとうっとりしてしまい、我に返ってこの“モテ”はヨーロッパアダルト路線か(そんな言葉あるのか?)と思ったけど、ナディッフでの展示http://www.nadiff.com/home.html
ではヘタうまラインを復活させていてちょっと懐かしくもあった。小金沢健人という作家は少年ではなくてまだまだ伸び盛りのオヤジですから。小金沢がのぞいている域には追いつけないかもしれないし、小金沢は穴の縁から投げ込んでいるのに、一生懸命のぞいてるうちに見えなくて穴のなかに「あ〜れ〜」ということにもなりかねないので用心しなければ。

会場風景より 奥は《untitled(birds/2corners)》2006


隣のZENSHIは、ポーランドの作家ミコライ・ポリンスキーの日本初個展。
http://www.zenshi.com/
大きなファンが静かにゆっくり回っていた。馬などのドローイングが逆さに貼られていて、こういうの好きだなあ。ときどきファンの音がするぞと思ったら、小金沢作品の扇風機のガチャガチャおしゃべりが、アパートの壁越しみたいにかぶさっていた。

《one day in paradise》より

手作りの積み木がいいですよ。きつねになったり、机になったり。販売しているのでぜひ。

手前が積み木のおもちゃ



最近レンタルしたDVD
河内カルメン
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00092QQGQ
鈴木清順監督。野川由美子が勤めるクラブが「クラブ ダダ」という名前だったので。名前だけだったけど。

かもめ食堂
http://www.kamome-movie.com/
荻上直子監督。さっぱりした女性監督が出て来てうれしい。小林聡美がきれいに撮られていて感動する。合い言葉は「コピ・ルアック」。

雨に唄えば
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD445/index.html
往年のミュージカル。ジーン・ケリーが雨の中有頂天で歌い踊るシーンは色あせないなあ。トーキー移行期の映画界の話。





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