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はじめを恐れることなく


吉祥寺の長いアーケード街の端っこにあるバウスシアターで、ピクシーズ再結成ツアーを追ったドキュメント映画「loud Quiet loud」を見た。元ライブハウスのPAを生かしたライブの臨場感あふれるレイトショー。http://www.boid-s.com/2007/01/210.php

ヒロスエ主演の映画「バブルへGO!」とほぼ同時代。ピクシーズは、1986年にシカゴで結成され、1993年に解散したオルタナティブ・ロックの先駆けとなったバンドだ。スター性が薄く、本国よりイギリスで先にヒットしたが、音楽好きの普通の若者が成功をつかむ契機となり、ニルヴァーナやスマッシング・パンプキンズはじめ多くのフォロワーを生んだ。2004年に再結成され、ツアーでは新しいファンも含めてどこもソールドアウトに。再結成後初のステージに出て行く彼らの緊張感は、こちらにも震えがくるほど。楽屋からステージに出る4人を追うカメラは、頭上高く手を伸ばすオーディエンスの熱気を捉える。ベースのキム・ディールが見せる驚きと恍惚の表情。



解散の理由は、バンドをつくったボーカルでギターのチャールズ・トンプソンと、人気のあったキムとの確執ともいわれているが、40歳の現在では、互いを気遣うシーンも見られる。ギターのジョーイ、ドラムのデイヴィッドも併せ、ライブ演奏での結実は見事だが、楽屋では話が苦手な4人。ドラッグやアルコールに呑まれないよう自身を塞き止めている危うさも持つ。映画ではメンバーの家族にも触れ、生死や再婚などの物語も交えている。


それにしてもピクシーズとは何だったのか。「準備はある」と言いながらアルバムをつくり始めないのは、映画にあるコミュニケーションの問題より、再演はできても、あのような音楽はもうつくれないという感覚があるからではないのか。二度と手に入れられない何か。さまざまな経験も乗り越えた年齢だから可能な変化もあり得るが、ピクシーズというアンバランスな生き物にそれが似合うか。と同時に、ジョーイ以外は未熟と円熟をコントロールできるほど大人ではない。ピュアネスって困難だなあ。音楽のほかには金儲けなどできそうにない4人。カート・コバーンは死んでしまったけれど、太ってもはげてももがいて生き延びる中年の姿に胸が熱くなる。




初個展には、初個展でしか出せないものがある。だから何かのせいにしたり、体裁だけ器用に整えたりでは、それは二度と味わえない。また、最近では若手アーティストがギャラリーでの取り扱いや美術館での展覧会に決まるのが早いせいか、もしや展示経験が少ないのではと思うこともある。狭い空間と同じやりかたをしていて身体の動きが小さかったり、空間のツボや抜けが考えられていなかったり。他の展覧会をあまり見ていないのか。若いアーティストまたは志望者には、展示の場数、試行錯誤し、ときには失敗してもいいオルタナティブスペースが必要だ。観客もたぶん、ものだけに目が行くことが多いのではないか。例えばギャラリーツアーでも、作品の形式や内容については詳しいが、空間の展示について教えてもらった記憶があまりない。

先日、2006年5月に千葉県柏市にできたTSCA KASHIWA(Takuro Someya Comtemporary Art)にやっと行った。http://tsca.jp/

紡績工場だった130坪もの空間をリノベーションした手作り感のためか、ギャラリーだがオルタナティブな匂いもする。ギャラリストの染谷卓郎さんと施工や展示を手がける山口さんは、展示施工会社で現場経験を積み、染谷さんはその後SCAI THE BATHHOUSEで働いて独立している。作家には作家の考えがあるため、展示に手を出さない(依頼された手配をする)ギャラリーも多いが、ここでは作品の技術的なサポートやアドバイス、考えを聞いて一緒に展示をつくったりしている。


終わってしまったが、6人の作家のグループ展「ナチュラル・ドリフト」について報告しよう。出品作家のうち、松山智一は、2月24日から、タムラサトルは4月に個展を行う。今回は使われていなかったが、1階の吹き抜けは天井高が8メートルある。階段を上がり、2階へ。




逢坂卓郎とドイツで展覧会を行うなど、着実に経験を積んでいる大塚聡。鏡面にLEDを埋め込み、光の粒子がリフレクションして一筋に点滅しては消え、それが数秒ずつ、点在するインスタレーション。奥行きがありながら儚い時間と空間に、向かいの飯田竜太の本のインスタレーションが映し出されている。




彫刻科出身の飯田竜太は、イスラム語などで書かれた古書を一度に1000冊くらい購入し、1ページずつ地層のように切り込みをいれていくという。わずかずつズレて重なる厚み。気の遠くなるような作業だが、すっとした佇まい。いずれ、バベルの図書館のようになるだろうか。





自動販売機の缶ジュースをゴルフクラブでプシューッと空けるタムラサトルの映像。それがただその重さであることを表す動物の彫刻や、モーターの回転により軸が軌跡を描き、白熱灯がつく機械もある。「それはそれでしかない」と既存の意味を遠ざける作品。http://www.lares.dti.ne.jp/~mm25/tamura/








ニューヨークで生まれ育った松山智一は、グラフィティと日本的な絵画をうまくブレンドさせた絵画をキャンバスや紙に描く。色彩や、消しながら層を重ねていく筆の動きが軽快。ナイキとのコラボレーションなどですでに注目されている。開催中の日本初個展では、スライドプロジェクターを使ったり、壁に描いたりもしている。




彫刻や絵画のつくりこみを徹底して行い、映像をつくるアンテナは、今回は漆塗りでキャラクター「ジャッピー」の立体を。本城直季は、大判カメラのアオリ撮影を用いて、実在の風景がミニチュアのように見える写真を撮っている。両作家とも注目されている。







東京芸術大学校舎がある取手から北千住までの常磐線エリアをアートでつなぐ「JOBANアートライン構想」も昨年から始まっている。ちょっと遠いけどTSCAには何かが生まれそうなイキの良さがある。


3月はダンスの季節
ニブロール 3年ぶりの新作東京公演「no direction。」
http://precog-jp.net/2007/01/no_direction_1.html


吾妻橋ダンスクロッシング「The Very Best of AZUMABASHI」
off Nibroll、KATHY、身体表現サークル、ボクデス&チーム眼鏡、ほうほう堂×チェルフィッチュ、康本雅子の豪華出演。
http://precog-jp.net/2007/01/the_very_best_of_azumabashi_1.html


東京国際芸術祭2007
特にレバノンのラビア・ムルエに注目。
http://tif.anj.or.jp/


東京芸術見本市
http://www.tpam.or.jp/




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