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ラウル・デ・カイザー展 昨夏、ベルリンのハンブルガー・バーンホフ美術館http://www.smb.spk-berlin.de/smb/sammlungen/details.php?lang=en&objectId=21 の一室でラウル・デ・カイザーの展示を偶然見た。一見してひょろひょろと描かれ、キャンバスのサイズも小さい。サッカー場かな、海岸かな、などとかろうじて想像できるような抽象画。けれどその一室にしばらくぼんやりといて心地よかった。6年前にワコウ・ワークス・オブ・アートで個展があったことを後で知ったが、そのときはどんな作家かわからないまま、薄いカタログを買って帰った。あれから1年も経たずにまた見ることができるとは。あのとき知ったドライトマトも今では簡単に手に入る。東京という街は運ぶことを生業とする人が多種多様に存在することができる、すごいなとよく思う。 ![]() 展示風景 ラウル・デ・カイザーは、1930年にベルギーのデインズに生まれ、現在も郷里で活動している。33歳から独学で本格的に絵画を始めるが、かなり長く他の仕事も並行して続けていた。80年代後半にゲント美術館館長のヤン・フートに見出され、1986年の「initiative」展、1992年のドクメンタ4で国際的な評価を得ている。自分の不明を恥じるが、リュック・タイマンスやマルレーネ・デュマスにも影響を与えた「Painter's Painter」として海外ではよく知られているという。本国での個展をはじめ、今年のヴェネツィア・ビエンナーレにも出品している。 ![]() 左:《Under》2006 oil on canvas mounted on wood panel 20.0×28.0cm 右:《Detail》2006 oil on canvas 28.0×34.0cm 最近は、70歳も後半とあって、以前のように身体を動かして絵を描くことが難しくなってきたため、椅子に座って小さなキャンバスで描いているのだそうだ。しかし、2,30センチの絵画でもゆったりと会場空間を充たしていて、ひとつひとつのものとしても、全体の組み合わせとしても楽しめる。イメージがリズミカルに分散されていて、慎ましいがささやかではない。たぶん部屋にかけておくと、ふと見ると、前に見たときより強い意志が感じられるようなそんな絵な気がする。 ![]() 《Spook》2007 Oil on canvas 34.0×28.0cm ![]() 《Favour》2007 oil on canvas mounted on wood panel 30.0cm×27.3cm 風景のラインのどこをどう取るか、筆の動きや絵具の重なり、色の組み合わせ、キャンバスの布目に絵具をどれだけ染み込ませるかなど、絵画にできる手段は少ない。しかし、肩の力を抜いたような何気なさで、これだけ魅力あるものをつくりあげられるのは、円熟の域ということなのだろうか。キャンバスの張り方を見ても、角の折れ込みがちょこんと飛び出ていたり、合板に張っていたり、その構わなさが、却ってものとして愛着が持てる感じを醸し出している。DIYというか、絵を描くことが生活のなかにあるってこういうことかと思いもする。 ![]() 《Upper》2006 oil on canvas mounted on wood panel 21.0×40.0cm これは半島だろうか、雪山のてっぺんで土が見えているのだろうか。《Hunting in the snow》という絵画と対にして見てしまうと、雪山の鮮血のようにも見えてしまうけど、よくわからない。眼を細めたときの少し輪郭のぼけたイメージのようなものにも見える。どの絵画も、野原か雪原か海原かサッカーグラウンドか、心の中の漠たるところか、多くはフィールドを描いているような気がする。天高くよりは足もと。雪の下で出番を待つ芽や、柔らかそうな雪に隠れている岩を感じるのは私の個人的感情だろうか。 ![]() 左:《Untitled》2005 watercolour on paper 27.0×21.5cm 右:《Untitled》2005 watercolour on paper 30.0×24.8cm タイマンスの上半身を描いた絵にならった水彩画はユーモラスだ。タイマンスの絵は、絵画の消失点をはぐらかし、何を見ているのか視線をさまよわせるようなものなのかと思うが、こちらも負けてない。見る者を1点に集中させない、見方を押し付けないフラットな構成においても、日本人にも親近感が湧くのではないだろうか。どこか漂流的なさみしさ、あるいは風に乗った軽快さ。何ごとかを教えてくれると思う。掌サイズのカタログも机の脇に置いてパラパラとめくれるし、散歩に持って行けば、歩道のかすれや壁のしみなどと一緒に楽しめる。 ラウル・デ・カイザー展 2007年5月30日(木)〜6月30日(土) ワコウ・ワークス・オブ・アート http://www.wako-art.jp/ |






