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東北芸術工科大学「I’m here.2007 根の街へ」


7月初め、山形にある東北芸術工科大学卒業生によるグループ展「I’m here. 2007 根の街へ」に行ってきた。芸工大の坂東慶一先生と「仕事はつくるもの」と題し、海外でフィールドを広げたり、東京と地方の2拠点で活動したりといったさまざまな作家やギャラリー、オルタナティブスペースの活動例について対談した。場所は、「ヤマガタ蔵プロジェクト」(街に残る荷蔵を再生)のひとつでもあるカフェ「オビハチ」。振動スピーカーによる音響を水盤に注入し、壁に反射した光が揺らめく酒井聡の作品が仕掛けられていた。プログラミングされた音は、弦楽器のリハーサルでの音出しのようにも聴こえた。




酒井聡《Phase of Sound #07 “reflection“》


東北芸工大は大学と美術館の機能を融合させた「美術館大学」として、蔵プロジェクトのほかにも、過疎の村の廃校をアーティストの工房とした「芸術工房ネットワーク」、温泉街にアートの灯籠を灯した「ひじりおりプロジェクト」など、さまざまなプログラムを地域と連携して行っている。過去2回仙台で行われてきた「I’m here.」は山形に戻り、市内5か所を巡る展覧会になった。8組の作家のなかから、特に場との関係性から作品を紹介したい。




後藤拓朗《共同体(仮設)》

築40年ほどのビルの一室で、樹木が描かれた(マグリットの「白紙委任状」のよう)古い壁紙を剥がしながら壁じゅうに鉛筆でドローイングを描き続けた後藤拓朗。コンピュータや絵画の道具、日用品などが積まれ、横に散らばる様子が描かれ、地と図を近づけ、建物と一体化されようとしている。描かれたピアノなどの楽器が、全体を秘密めいて柔らかくつないでいた。




池谷保《Untitled》

同じ部屋に、池谷保のペインティングが対照的に同居している。突起した一筆一筆が絵具の物質感を感じさせ、なおかつ軽快だ。さまざまな事象がレイヤーをなし、群衆のように湧いている。たぶん価値観としてはフラットなのだが、ノイズも含めた部分の存在感を全体に響き合わせたいように思われた。粒状の絵具を鎖状につないだ立体は外にも続いている。時間ってたわんでいるのかもしれないと思う。

このビルの土井忠夫オーナーがふたりに空間を預けて生まれた作品。「山形にはゆっくり見守るような気質がある」と土井さんは語る。土井さんが経営するぎゃるり葦では、阿部亮平が大きなペインティングを展示。4畳半の部屋の壁から床にキャンバスを垂らして、手で絵具を擦り込んでいったもの。ひとりで絵を描くことから、最近は家族などに関心が向いているそうで、日用品などを画布でくるんだ作品もあった。もしかしたら人との関係性への興味というよりも、絵画の外に出て(あるいは他者の眼で)見たいんじゃないかという気もする。




大沼剛宏《sandrodynamics》



松岡圭介《a standing man》

本来は規則的な性質を利用し、砂をかけると自然に幾何学的な造形になる大沼剛宏の彫刻。触感的で、穴を通る砂の雨もこの家に残る屏風と風景をなしていた。http://www.sandrodynamics.com/ 敷地内の蔵を使ったギャラリー絵遊(みかんぐみの竹内昌義が学生たちと建築)では、松岡圭介が合板を重ねた人間のような彫刻を展示。東京でも発表されていたようだが見逃していた。ただ、長瀬渉の陶芸も同様、この場所のための新作ではなかったことは(小品にも関係性が感じられず)機会としてもったいない。




遠藤勇太、新関俊太郎、井上裕太、大槌秀樹、古川紗帆《1984-espresso》

1984年創業の、貨車を改造した「カフェ エスプレッソ」。若い頃に欧米や中南米を旅したという高橋正平オーナーも同展の支援者だ。工芸科出身の院生5人による初の共同制作。カフェのモニターに映る小屋に移動すると、香ばしい香り。天井からカップにエスプレッソの滴が落ちてくる。残紙(地元の印刷所からの提供による)でできたテーブルの上の茶色い染み。要素が多すぎたものの素直に楽しめた。こういう機会にいろいろ試してみるのは悪くない。


デザイン領域の有志で結成された「Link」のプロデュースによるオープニングパーティは、山形産のだだちゃ豆などを使った手作りのベーグルサンドも美味しく、いい夜だった。近所の人がふらっと来てくれるとなおいいのだが、これからの積み重ねかと思う。

アートバブルと、若い世代の就職の困難さを見比べれば社会情勢からの深刻さもあると思うが、いつでも過渡期であり、アーティストには渡り合ってほしい。欧米的な価値観に依らないところに行くのもいい。外へ出て価値観を相対化すれば、ああこっちへ行けばいいなと思うし、どこへ行っても同じだと思うにしても、出て思うのと出ないで思うのはやはり違う。動きながら考えよう、ノイズをかわし、ノイズを楽しむタフさを身につけよう。

帰りの新幹線で、平たく広がる田や、山の斜面を覆うビニールハウスなどを眺めながら、それぞれの地形をそれぞれに切り開いていることを思った。50年ぶりに小学校の同窓会に参加したという隣の年輩女性から、泥つきのにんにくをいただく。陶芸をしているとお聞きしたので、ル・コルビュジュエ展のチケットをさしあげた。等価交換は成立したかしら。にんにくはとても美味しかった。


I’m here.根の街へ
(東北芸術工科大学卒業生支援事業)
2007年7月5 日(木)〜15日(日)
山形市内(蔵 オビハチ「灯蔵」、ギャラリー絵遊+蔵大マス、ぎゃるり葦、土井ビル2F、恵楚画廊、Caf? Espresso)
http://www.tuad.ac.jp/museum/
http://museum_blog.tuad.jp/lavo?p=log&lid=77853

写真提供(松岡圭介以外):東北芸術工科大学





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