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八木良太展「直線か円環か積層か」 持塚三樹展「イト」 秋の夜長、マツムシやコオロギの鳴く声をBGMに原稿を書いていると、とりあえず今年も日本の秋が来たことにほっとするが、日中の残暑は厳しい。日本がもし熱帯気候になったら民族性も変わるのだろうか。マングローブの湿地帯だった1600万年前の日本へじわじわ戻っているのだろうか(あ、でも樹木が少ないか)。生き残るのに強いのは甲殻類なんだろうか。7月末までワコウ・ワークス・オブ・アートで開催されていた若手グループ展のひとり、三井美幸の甲殻類のような立体は、クローネンバーグのようで怖かった。 http://www.wako-art.jp/exhibitions/data/2007/fromto_4/ 地上に出てきたセミが嫁探しで一斉に鳴いている。「死ぬまでにしたい10のこと」なんて、1に必死なセミにしてみればどうなんだ。それにしても昆虫にとっても、ただ生きることは許されていないし、できないようになっているのか。5月にオオタファインアーツで行われた竹川宣彰の個展に、セミをモチーフに「時間」を積層として捉えた絵画があった。そこには「循環」の絵画と、同時多面体として捉えたようなインスタレーションがあった。 http://www.geocities.jp/taketake_kun/index.html 無人島プロダクションで開催中の八木良太展「直線か円環か積層か」でも、時間をテーマとした映像と音の作品が展示されている。 ![]() 《Time Based Book》2007 白いページからなり、上部のバーコードを読み取ると映像が映る本《Time Based Book》では、街中のバイクややかんの沸騰などさまざまな場所で撮った映像がページ毎に映し出されていく。なかには、縞模様にズームインし、引いてみると虎の毛皮であった、認識の推移を時間として捉えた映像集もある。レコードの溝をシリコンで型取り、水を入れて凍らせた《Vinyl》という作品は、今回は1分毎に氷のレコードが溶けていく映像に展開していた。両作品とも、前後どちらへも素手でページをめくることができる。後戻りし、何度も同じページを再生できるというのは、考えてみると不思議な状況だ。 ![]() 《Time Based Book》2007 逆回転を利用した、ミヒャエル・エンデ「モモ」の朗読レコードの作品は、呪文のように聴こえる。録画・録音メディアの構造を利用して、時間や認識の順を入れ替えるデヴィッド・リンチの映画のマジックを思い出す。たぶんまだ、直線でも循環でも積層でもない時間の捉え方があるのだろうとも思う。 ![]() 《MOMO》《sky|sea》2007 展示風景 ミサコ&ローゼンで開催中の持塚三樹の個展「イト」は、絵画と立体で空間を構成している。朝昼夜を描いた作品群は、写真などを見て描くのではなく、記憶や想像や体感などが入り混じった状態が描く過程で混ざり合っている。パレットを使わず、絵具をキャンバスに直に置き、筆や刷毛など複数の道具や指で伸ばしている。思うようにいかない筆の方が好きで、なおかつエッジはきれいな筆で引き締めていく。テーマを決めて新作を描くというのではなく、常に描き、しばらく置いておいたものに描き加えたりするという。 ![]() 《ミズクモシロキ》2007 彫刻《イキ(昼)》2007 時間をかけて見ていると、下の層に描かれて塗りつぶされた跡がうっすらと見えてきたり、樹木の生え方から途中でキャンバスを回して描く向きを変えていることがわかったりする。のべ2〜3年が経過している絵など、自身でもプロセスは覚えていないそうだ。 ![]() 《ニケ》2007 持塚自身は、夜と明け方の間の状態が好きだという。私は、オールナイトの野外フェスで、海から来る風を受けた草原に座って聴いた音楽を思い出した。作家が言っていることとはきっと違うけど、音って粒なのかなと思った思い出。 ![]() 手前《ワ》2007 マンガにあるような、絵の中にいる女の子が思い巡らせている様子が絵の中に入っている。マティスの《ダンス》の輪(山口薫の《おぼろ月に輪舞する子供達》も思い出す)。枝と枝の間のカラフルな色面は、樹木を見て、空間のようなものがあるなと子どもの頃に思ったことなのだそうだ。 ![]() 左《パキディア》2007 その奥は、不定形の絵画や彫刻による小道のようになっている。 身体を動かせばまた違って見えてきて、長いこと見ていても飽きない。この見えてくる時間というのはなんなのだろうか。記憶が積み重ねられているんだろうか。やはり削られたり、塗り変わったりしているのだろうか。つくられた時間、運ばれてくる時間、観客がそれぞれに見る時間。そういえばエデュケーターのアメリア・アレナスは観客の多視点を受けとめ、多視点なままで解散(散開)させる。ギャラリーに自然に足が向くようになったのは、作品を見る前の自分と後の自分が少し変わっているように思うからかもしれない。 八木良太展「直線か円環か積層か」 2007年8月22日(水)〜9月22日(土) http://www.mujin-to.com/ 持塚三樹展「イト」 2007年8月27日(月)〜9月23日(日) http://www.misakoandrosen.com/ |







