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徳重道朗展「風前の」


いつのまにか(大家さんの)庭の虫の声も消え、紅葉が道端に溜まり、晴れた日には枯れ枝も金色に輝く冬が来た。この前、道行く女の子が「子どもは風の子、元気な子―」と自作曲を歌っていた。下校時の中学生や自転車で通り過ぎる人、声楽を習っている人、風呂場で歌う子どもなど、私の住む町は歌う人が多い。

10月でフリーライター生活10年を越えた。よくもったなあと思いながら、いつもと変わらない日々を過ごした。いろいろな作品を見て、いろいろなアーティストに会って来たが、結局、私自身の見方やどう生きるかってことがなきゃいけないなと思う。それぞれの「違い」で成り立っている(はずの)世界なので、何が正しいかはわからない。だからこそ恥や否定を恐れてはならず、自分の正しさを立証しようとする仕事ではないなと思う。国とか社会とか教育とか制度のせいにもしたくない。それとどんな仕事でも同様だと思うが、体力をどう持続させるかが肝心。取材もそうだけど、書くことは体を使う。

この前、写真家の広川智基の個展があった。最初に知った時は高校生。まだまだ若いから大きな変化ではないけど、写真も少し変わってきていた。
http://chi.iii.u-tokyo.ac.jp/photo_dialogue/artist.html
いまインドでグループ展に参加している小金沢健人も97年に試作を見せてもらったときは大学生だった。彼は卒業後、ドイツに行き、道を切り開いた。
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/exhibit/contemporary/vanishing_pointsl.html

作家をどれだけ先に知っているかは大した問題じゃない。ただ、最近「昔から知ってる」と作家の人たちに言われるとちょっと嬉しいのは、お互い頑張って来たんだなと心で思うからだ。まだ10年だけど。歳をとらないとわからないことがある。だから、深い穴に落ちることがあっても、命を落とす方へ行かないでほしい。

ところで、今回は会ったことのない愛知県在住の徳重道朗さん(前回もオープニングに行けず、会えなかった)の作品について書いてみたい。


《風前の木漏れ日》2007

テーブルでできた森。照明が扇風機の風で揺れている。テーブルの下に潜り込むと、いくつもの穴から光が射し込み、動いている。しゃがみ込むのでは頭がつかえてしまうので、寝転がる。テーブルの下に潜るなんて何十年ぶりだろう。蜘蛛の巣や樹木などを描いたドローイングが壁に張られている。少し離れて見ると、テーブルの曲がりくねった足が樹木に見えてくる。


《森》(ドローイング)

《蜘蛛》(ドローイング)

木漏れ日は、葉と葉の隙間がレンズのようになって光を集め、太陽の形を反転させて地面に映し出しているから形が丸いという。指を輪っかにすると、その中が膜のようにみえてくる遊びを私は時々する。穴ぼこだらけの天板は、森の中と外(上)の境界だろうか。上から見ると惑星の表面みたいだ。




彼は「木漏れ日の中心はどこだと思いますか?」と言ったらしい。線を収束していくと太陽ということ? あるいは木漏れ日は隙間の数だけあってどれかひとつが焦点ではないということ? テーブルの下から見ると、穴のすきまから照明(しかも2つ。大陽?)が動いているのが見える。


《森の模型》2007

もうひとつの部屋では、木の葉のドレスや、木彫りの上に樹木が生えたようなインスタレーションがあった。人体から樹木が生えているペインティングも。過去のジオラマ的な作品とこれらの作品は、山を外から俯瞰しているという点で共通しているようだ。それに対し、さきほどのテーブル作品は、外からも構造が見られるし、中にも入ることもできる。木漏れ日は、森の中に入ってみなければ発見できない現象だ。


《木漏れ日の中心》2007


《木漏れ日の部分》2007

作家がものをつくる道筋として、前回は、既にあるもの、他者がつくったものに導かれながら光景をつくり出し、世界の構造や仕組みを探っていたようだったが、今回は、内発的な個人的な穴に潜ってみたようにも見える。森の中に入ってみたら、身体の中に森があった、あるいは身体から樹々が生えてやがて森ができるということか。外にあるものが内にあり、内にあると思っていたものが外にある。ぐるっとねじれてつながってしまったんだろうか。



テーブルの下で寝ていると、テーブルの上の異次元には行けないんだろうなと思いつつ、木漏れ日のような隙間、抜け道はあるのかなという気になってきた。あるいは日が沈んだら消えてしまうように、やっぱり自分も世界も動いていてつかまえられるものではないのかもしれないけど。

徳重道朗展「風前の」
2007年10月20日(土)〜11月24日(土)
TAKEFLOOR404&502
http://www.takefloor.com/


秋冬コレクション(本)
本屋で選んで読むだけなので最新ではないです。


村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋) …氏のようには到底書けないが、走ることと書くことの共通点というのはよくわかります。
内田樹『村上春樹にご用心』(アルテスパブリッシング)
…村上春樹が書いているのは「文化的雪かきをする人々」。その普遍性を書いた本。
横山裕一『NIWA』(イースト・プレス)
…今回はセリフが入りました。「六本木クロッシング」にも出品中。
松本大洋(原作:永福一成)『竹光侍』(小学館)
…正面顔と横顔の合体がちょっと増えた。時代劇群像劇。
小野博『Line on the Earth』(新宿書房)
…世界50か国100都市を旅した写真家。11月25日BOOK246でトークあり。
エイモス・チュツオーラ『やし酒飲み』(晶文社)
…ぐるぐる酔いが回るような物語。ナイジェリアの小説。
渡辺ペコ『ラウンダバウト』(集英社)
…中学生、14歳。ものすごくたいしたことない話だけど、繰り返し読める。
福岡伸一『生物と物のあいだ』(講談社現代新書)
…複製ってそういうことなのかー。科学ドキュメント。

*11月25日(日)14:00〜マイケル・プライム+鈴木昭男トーク&ライブあり。「サイレント・ダイアローグ」(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC])生物の発する光や音を可視化、可聴化する展覧会。
http://www.ntticc.or.jp/index_j.html




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