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LOOKERS INTERVIEW No.005 (2/2)



LOAPS:実際に海外に進出されたキッカケはなにですか?
奈良さんはヨーロッパ中のギャラリーを観てるから、ギャラリーとはどういうものかを知ってたんです。そういったことを教えられました。その時に、海外にも色々なアートフェアがあるって事を知りました。一回シカゴのアートフェアには白石さんのところで働いている時に行ったことがあるんですけれど、それはすごく大きいアートフェアだったんです。これは出店料も高いし無理。それでグラマシーのアートフェアっていうのがあるというので、1996年12月に開かれるそのアートフェアに出かけて行ったわけです。若いギャラリーの人たちが集まって作ったアートフェアで、アメリカン・ファインアートのコリン・デランとかパット・ハーンとか、ポール・モリスとか。そういった人たちがはじめたんです。ホワイト・キューブ(※)なんかも出店していました。ロサンゼルスのサンセットブルーバードにある、ジョン・ベルーシが死んだことでも有名な、シャトーマーモットっていうホテルでやるアートフェアでした。そのときの参加費が10万円ぐらいなんです。グラマシーのアートフェアはロスとマイアミとニューヨークと3つあったんですけれど、3つに出店しても2000ドル。安かったんですよ(笑)。今日本でやっているart @ agnes(※)みたいなものです。ホテルのひと部屋が1ギャラリーの展示スペースなんです。ホテルで夜寝て、朝起きて作品を部屋のベッドやバスルームに並べたりとかしてギャラリーをオープンするわけです。あの時は30件くらいのギャラリーが出展していたと思います。
LOAPS:そのときの海外での反応はいかがでしたか?
向こうの人たちってすごいですよね。当時は村上隆とかだれも知らないわけじゃないですか。でも次々に買って行くんですよ。凄かった。あのピーター・ノートン(※)が村上さんの作品を買っていったり、アンティークディーラーの人が買っていったり。ミスターの小さいドローイングで女の子の裸ばかり描いたものを何十枚も部屋の冷蔵庫に貼っていたら、同時に2人欲しいっていう人が来て1枚ずつジャンケンで取っていってもらったり(笑)。やっぱり欧米の人はアートに対する経験値が高いと思いました。若い作家の作品を買うっていうことに凄く慣れているというか。もちろんお金持ちの人もいるし、そうでない人もいるわけだけれど、お金のない人でも、まだ値段が安い若い作家の作品を買って、その後その作家の作品の値段が上がったということを、いくつも経験しているんですよ。例えば、レオ・キャステリが1960年くらいにオープンしたときの作品が億単位になっていたりとか。バスキアの1983年の作品を当時、100万で買ったものが今では億なっている、とか。現代美術界でそういうことが起きたのをみんな経験として記憶しているんですよね。だから村上さんや奈良さんのように値段が高くなる作家たちがアメリカ中にいっぱいいるわけです。それを経験の歴史で知っているから若い作家の作品を買うことにあまりためらいがないんですよね。日本でわかり易く説明するとしたら、株と同じですよね。昔は一部上場の手堅いものを買うのが主流だったけれど、今ではマザーズとかヘラクレスとか新興市場ができてきたじゃないですか。それで一般の人もまだ若い会社の株を安く買うようになってきた。株の世界では若い人に投資するっていうのは普通じゃないですか。それがアートの世界で普通に行われてきたのが僕にとっては驚きだったんです。


LOAPS:例えばグラマシーの時に奈良さんとか村上さんの作品はいくらくらいで売っていたんですか?
4万とか2万5千円とか(笑)。面白かったのはね、60年代を生きてきたホーリー・ソロモンとかレナ・ブラインスタインとか有名なアートディーラーの人が「面白い」って言って買っていってくれたんですよ。孫のクリスマスプレゼントだって言って。僕らとしては、そういう人たちが面白がって買っていってくれるのってすごくおもしろかった。僕がすごく運が良かったのは、その頃は日本のギャラリーの人たちはそういう若いアートフェアに行かなかったということです。僕とタカさん(タカ・イシイギャラリー)だけだったかなあ。リステのアートフェアも僕だけだった。同世代のギャラリストが同時にやりはじめた感じがあって面白かったですね。リステではニコライ・ワーナーとかケイシー・カプランとか当時若手のギャラリストたちと会ったりできましたからね。今までの日本のギャラリーにとって、フランスやアメリカの老舗ギャラリーは神様だったわけですから。そこから輸入して日本で展覧会をして高いものを卸すっていうのが基本でしたから。それまでは日本もアメリカも同世代のギャラリーが一緒に育っていくというのはなかったかも知れないですね。
LOAPS:小山さんはどういった観点でアーティストを選んでいるのですか?
一番初めに作品を見るじゃないですか。もちろんその作品がビジュアルとしても面白いのが大事だったりはするんですけれど、やっぱり作家本人が一番重要ですね。会ってみてどれだけ興味深い人かが結構大事です。例えば絵を描いている人はアウトプットは絵しかないかも知れないけど、インプットは生活している中で色々な形があるわけじゃないですか。本を読んだり、映画を観たり、友達と話したり。そういったことがちゃんと出来ている人の方が面白いですよね。もちろん友達が全然いなくても自分ひとりでモノを作り出せる人もいるだろうし。そういうインプットの部分は会ってみないとちょっとわからなかったりしますからね。その作家がどういう生き方をしてきたかといった事が大事で、それをどうやって濃く作品に出せるかですね。
僕が作家を選ぶときは、もちろん趣味的な好みもあるけれど、そうじゃないものも入れていこうと思っているんです。僕の感覚も、年を取ってくるとわからなくなってくるじゃないですか(笑)。だからスタッフが選んできた作家のものも一応やってみたりもしようと思うし。自分の趣味だけのギャラリーにすることは避けようと思っているんですね。基本的に商売としてやらなくちゃいけないので、狭くなってしまってはいけないと思っています。いろんなレンジを持ちたいと思っています。
LOAPS:LOAPSに参加してるこれからのアーティストに一言いただけますか。
名前をちゃんと入れよう(笑)。アーティスト名が匿名の人が多いのが気になりますね。アーティストの人って新しい価値観や風変わりなものをやっているわけだし、言ってみれば作品で恥かくのが仕事じゃないですか。僕らはその作品をいいと思って一緒に恥をかこうと思うわけです。「小山さんのギャラリーまたこんな展覧会やっちゃって〜」とか思われたりするわけですから(笑)。
新しいものを初めて 世に出すわけだから恥をかくのは仕方ない。でもやっぱり初めにアーティストにその覚悟をしてもらわないとね。だから自分の名前くらいちゃんと出した方がいいと思いますね。名前をきちんと書いていないと、恥かく覚悟ができていない、って思ってしまいます。


LOAPS:小山さんに作品を見てもらいたい人はどうすればいいでしょう。
基本的には破棄してもいい状態のファイルを作ってもらって、郵送で送ってください。1月に一度か2度ギャラリーのみんなで見る機会を作っているので、興味があったら連絡します。興味がなかった場合は破棄させていただきます。でもその前にアーティストもギャラリーを吟味する必要があるのではないでしょうか。自分の作品が大事だと思ったら、自分の好きなギャラリーに作品を持って行った方がいいと思います。まずギャラリーを歩いてみて、どのギャラリーが自分にとっていい方法、いい形の表現なり、設置のしかたをしてくれるのか考えてから持っていったほうがいいと思います。
会いたいっていってアーティストから連絡あって、場所どこですか?と聞かれるのは困ってしまいます (笑)。ギャラリーに来たことないっていうのは。それは僕らにとっては失礼だし、アーティストにとっては自分の作品を大事にしてないってことですから。多分その時点でダメだと思いますね。確かなことだと思います。

注)Art @ Agnes:東京・神楽坂のホテル「The Agnes Hotel and Apartments Tokyo」にて行われたアートフェア。今年1月に開催された第2回目となるArt @ Agnesは、有名〜若手まで19のギャラリーが参加。1Fから3Fまでの客室を、それぞれギャラリーに見立てて作品を展示・販売するというもの。

注)ホワイト・キューブ:イギリス、ロンドンのギャラリー集合地帯、デューク・ストリートに、1993年オープンしたスペース。J・ジョプリングが主宰。コンテンポラリー・アート中心のスペースであり、きわめて小規模でありながら、企画の斬新さとユニークなアーティストの発掘で世界中から注目されている。その後、イースト・ロンドンのホクストンスクエアに移動、巨大なスペースをもつ。近年では、95年のD・ハースト、96年のJ・ピアスン、97年のG・ヒル、R・プリンス等の展示が評判となった。

注)ピーター・ノートン:PCのウイルス対策ソフト、「ノートン・ユーティリティーズ」を開発したピーター・ノートン・コンピューティング社の創設者。現在はソフトウェア開発から引退し、現代美術専門の画商・コレクターとして生活している。


村上隆(KaiKai KiKi HP) http://www.kaikaikiki.co.jp/
奈良美智(小山登美夫ギャラリーHP) http://www.tomiokoyamagallery.com/artists/a_nara.html

次回のLOOKERS INTERVIEWは井口真吾氏(Zちゃん/バンロッホ)です。




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