LOOKERS INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW

LOOKERS INTERVIEW No.009 



タロウ ナス代表 那須太郎氏

六本木、コンプレックスビルにある現代美術ギャラリー。
国内外のアーティストを扱い国際的に活躍。取り扱い作家には、宮本隆司、アレッサンドロ・ラホ、デイヴィッド・ソープ、長谷川純をはじめ、田口和奈など新進気鋭のアーティストも所属している。
タロウ ナス
http://www.taronasugallery.com/

LOAPS:アートディーラーになったきっかけを教えて下さい。
学生時代は美術ではなく経済を専攻していました。たまに美術館に足を運ぶ程度で、特に美術に興味があるという感じではありませんでした。時代という事もありますが、真面目に仕事をしようとか全然考えていませんでした。
大学卒業後、たまたま百貨店に入社し、そこの美術部に配属されたんです。百貨店の美術部というのは特殊な世界で、1ヶ月の間に10本ぐらいの展覧会をやるんです。会場が2、3個あって、1週間ごとに入れ替えをするので、流れ作業のようにやっていくのです。しかも百貨店自体が作家と直接仕事をするというのではなく、どこかの画廊を通して仕事をするのです。
そうしているうちに美術をすごく面白く感じる様になって、同時にその美術作品を作っている作家と一緒に仕事をしたいと思う様になったんです。
そこでようやく、「画廊だ!」という事になりました。何も知らなかったので、画廊に入る為に百貨店を退職しました。
た後、98年10月に佐賀町に画廊をオープンしました。


LOAPS:実際に画廊に入っていかがでしたか?
画廊に入る時に、作家と仕事をするのが目的だったので、当然、「今、生きている作家と仕事をするしかない」という非常に単純な理由で現代美術の世界に飛び込みました。たまたま友人から(※)西村画廊という所が募集をしている事を聞いて、西村画廊に電話をしたんです。実際に画廊に就職して、有名な作家の名前を知らなかったり、全くのゼロからのスタートのような状態でしたね。
LOAPS:その後独立なさったわけですが、那須さんのギャラリーの所属アーティストをみるとイギリスの作家が目立ちますが、何か理由はありますか?
元々、西村画廊自体、イギリスの作家が多かったですね。(※)デイヴィット・ホックニーにはじまって(※)ルシアン・フロイトや(※)リチャード・ハミルトンなど70年代からイギリスのアーティストをやっている画廊でした。
その後、96年に西村画廊を辞めた時、イギリスに半年間行ったんです。丁度、(※)YBAの次の世代が出てきたところでした。
知り合いの、知り合いの、知り合いという感じで人を紹介してもらったんですが、その人のパートナーがたまたま(※)ゴールドスミスを卒業して2、3年の若いアーティストでして、元同級生として、(今の所属アーティストでもある)アレッサンドロ・ラホとかを紹介してもらったんです。デイヴィッド・ソープ、長谷川純もみんなその時紹介してもらったんですよ。
現在でも親交の続くさまざまな出会いのあったイギリスに半年程滞在した後、98年10月に佐賀町に画廊をオープンしました。


Alessandro Raho
Ewan
2001
oil on canvas
(c) Alessandro Raho 2001
courtesy of TARO NASU GALLERY

LOAPS:イギリスと日本のアートシーンの違いでショックだった事というのはありましたか?
「現代美術ってこんなに人が集まるものなんだ」というのはありましたね。日本のオープニングレセプションというのはよく閑散としている事がありますが、向こうでは「プライベート・ビュー」といって、とにかくその日は若手アーティストやアーティストを目指す人が皆集まるんですよ。若いアート関係者が集まり、お互いに情報交換をするんです。向こうの若者って日本の若者と比べるとずっと同世代のつながりが強くて、その社交場として現代美術のギャラリーが機能しているんです。実際、そういう所に集ってきた中からスター作家が生まれてくるんですよ。
LOAPS:どのような観点でアーティストを選んでいるのですか?
手法やメディアとして新しいものにこだわるのではなく、ある種の隙間をいくアーティストや長いスパンでいい作品を作っていくアーティストを選んでいます。時にはクラシカルなスタイルで、保守的とも捉えられるかもしれませんが、一気にスターになる作家よりも長い時間をかけて評価される作家とじっくりと仕事をしていきたいと考えています。


長谷川純
Untitled
2005
household gloss paint on canvas
(c) Jun Hasegawa 2005
courtesy of TARO NASU GALLERY

LOAPS:那須さんに作品を見てもらうには?
よくギャラリーに電話がかかってきますが、まずはウチがどのようなギャラリーでどういう作家を扱っているのか、事前に知っていないとダメですよね。
ギャラリーといってもオーナーやディレクターによって様々な方向性があるわけですし、作家の方でも自分に合ったギャラリーを選ぶべきですよね。
LOAPS:今後アートシーンに期待する事はありますか?
日本人のアーティストをどんどん世界に出していきたいと思ってます。今後、ヨーロッパやアメリカの人達もオリエンタリズムではない次の段階に来るんじゃないかって思うんです。そこに期待してますね。


LOAPS:ギャラリーのこれからについてお聞かせ下さい。
実は2006年6月26日から大阪で新しいスペースをオープンします。建築家の青木淳さんの設計によるもので、ホワイトキューブに対する問いかけとしての空間で、美術作品とともにある空間そのものを体験することを目的としています。最初の企画としてはアーティスト・小粥丈晴さんの「White Hole Gift Shop」展を開催します。
LOAPS:現在展覧会を開催している田口さんについてお願いします。
彼女は絵を描いている人だけど、その絵を写真で撮っているんです。絵を作品として出せば良いのかもしれないけど、でも絵が上手い人は沢山いるわけで、絵が上手いだけでは今の時代、評価されるのは非常に難しいのです。
自分の絵の上手さをどういう作品に落とすか?という所が非常に興味深い所であり、田口さんはいい落としどころを見つけていると思います。 絵を写真で撮る事により、絵画でも写真でもなかったような非常に面白い表現となっています。
絵は彼女にとって写真を撮る道具であり、その絵は決して人に見せないのです。絵はマテリアルであって作品ではないのです。


田口和奈
忘れたことをおもいだす
2006
gelatin silver print
(c) Kazuna Taguchi 2006
courtesy of TARO NASU GALLERY

LOAPS:最後にLOAPSの若いアーティスト達にアドバイスをお願いします。
とにかく沢山の作品を見る事ですね。現代美術の事だけでなく、様々な事を実際に見て体験して欲しいと思います。今、現代美術というのは沢山の事を取り込める要素を持っていて、そういった意味でもいろいろな事を知っておく事が何らかのきっかけになると思います。まぁ、「勉強しろ!」って事ですね。



注)西村画廊:http://www.nishimura-gallery.com/

注)デイヴィット・ホックニー:イギリスの具象絵画を代表する1人。1937年イギリスのブラッドフォードに生まれ。1964年にカリフォルニアに移住。作品は、アメリカ西海岸の明るい陽光を感じさせる華やかな色調で、室内風景、プールのある邸宅、人物などを描いたものが多い。

注)ルシアン・フロイト:精神分析学者フロイトの孫でイギリスを代表する画家。最近では妊娠中のケイト・モスの肖像画が話題になった。

注)リチャード・ハミルトン:ポップアートの先駆者。作品『一体なにが今日の家庭をこれほどまでに変化させ、魅力的にしているか』に登場するボディビルダーの男性が持つロリポップキャンディーの包み紙の「POP」の文字がポップアートの語源になったという説がある。

注)YBA:(Young British Artists)90年代初頭、イギリスの若いアーティスト達が自主運営するスペースで展覧会をするようになり話題になる。そのムーブメントになった若いイギリスのアーティストの総称。著名な作家としてダミアン・ハーストなどがいる。

注)ゴールドスミス:ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジのアート&デザインコース。YBAのアーティストの多くを輩出。



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