LOOKERS INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW

LOOKERS INTERVIEW No.016(1/2) 




ART iT発行人兼編集長 小崎 哲哉氏

1955年東京生まれ。1989年都市型文化 情報誌『03 TOKYO Calling』(新潮社)副編集長、1996年インターネットエキスポ日本テーマ館『センソリウム』のエディトリアル・ディレクション担当、1999年日英バイリンガルのカルチャー・ウェブマガジン『REALTOKYO』創刊。現在ART iT発行人兼編集長。

ART iT
http://www.art-it.jp/japanese/index.html
REAL TOKYO
http://www.realtokyo.co.jp/japanese/


LOAPS:小崎さんがアートに興味を持ったきっかけを教えてください。
10代の頃は映画、音楽、特にロックが好きでバンドもやっていましたが、特別アートに興味はありませんでした。アートに興味を持ったきっかけは、大学在学時にフランスに留学していた時です。すごく貧乏で、屋根裏部屋でエレベーター無し8階みたいなところに住んでいて、安くて世界の名作が見れる(※)シネマテークフランセーズに入り浸って生活していました。それと、パリに限らずヨーロッパには、ルーブル美術館を筆頭に、美術史上の名作が多くある美術館がそこら中にあるわけです。ちょっと旅行すれば(※)プラドや(※)テートブリテンもあるので、おのずと「ヨーロッパ文化の背後には厚みのあるアートっていうものがあるんだな」って段々意識し始めました。個人的に一番凄いって思ったのは(※)フェルメールですね。誰でもそうですが、観るとぶっ飛ぶわけですよ。それが意識的にのめり込んだ最初のきっかけです。それから映画や音楽と同じように、美術館でも面白いものがやっていると普通に見に行くようになりました。



その後、大学を卒業して編集者になりました。編集者でも、特にカルチャー誌だと雑食なんですよ。ベジタリアンでもなければ焼き肉ばかり食べているのではなく、何でも食べてやろうっていう感じで。たまに食中毒にもなったりするんですが(笑)。その中で、自然にコンテンポラリーアートに出会いました。英米ではポップアートと音楽が近い関係にあったし、もちろんグラフィティはストリートから生まれてきたし。現代のファインアートでは、フランシス・ベーコンが最初にぐっと来ましたね。僕自身は、美術教育を専門的に受けたことはありません。アートはいろいろある中での一ジャンルであり、ただし他とは独立してあるものではなく、他の各ジャンルの表現と決定的に、または微妙に関わり合っているものだったっていうことですね。
LOAPS:小崎さんは東京のみではなく、なおかつアートというジャンルのみではないところでアートという中にいられるわけですが、そういう面でのアートと地域性などについて考えられることとは?
人が暮らす環境によって表現するものが変わってくるのは当然でしょう。風土や風向は創作に大きく影響する。一方で、アートによる地域おこしがありますが、これはアートの本質にはあまり関係がないと思います。とはいえ、社会的には重要な意味があることなので、最近世界的に流行っている(※)ビエンナーレ、(※)トリエンナーレなどの国際展や、アーティストがボーダレスに国境を超えて活動していくことを含めて、「地域とアート」というテーマには注目しています。

LOAPS:小崎さんがART iTとREAL TOKYOをバイリンガルでやられていることに、東京のみで語るわけでなく、またアートの中でのアートではなく、社会の中での一つのジャンルでのアートというものを考えられているのを感じました。地域とアートのつながり方の理想は?
重要なのは外に開いて行くことだと思います。ART iTやREAL TOKYOをバイリンガルでやっているのは外に開いていくことに深く関わっています。僕は人生の半分くらい編集者をやってきて、“あらゆるメディアはナショナリズムに奉仕する”という仮説を抱いているんです。ある国のメディアはその国の国内ニュースが最優先だということ以外に、その国あるいは母語の論理に基づいたその国内あるいは言語集団にのみ通用する論調がほとんどだということが問題です。国内の人には理解されても、他国や異文化の人には理解されない。身近なニュースの重要性は言うまでもないけれど、ことカルチャーに限った場合、それだけではまずいと思うんです
ART iTがカバーするエリアも日本だけでなく、アジアパシフィックまで広めていますが、最終的には世界まで行っていいかなって思っています。世界の情報っていうのは、欧米中心ではありますがそれなりには出ているわけですよ。しかし、アジアパシフィックで、隣の国の情報を知っているかっていったらよく知らない。(※)ベネチアビエンナーレや(※)バーゼルのアートフェア、(※)マシュー・バーニーや(※)ダミアン・ハーストの情報は知っているけど、「韓国では何をやっているの?」とか「マニラのアートシーンってどうよ?」ってなると知らないじゃない。僕も調べなくちゃわからない。それでART iTを作ったわけです。 なぜ重要かっていうと、特に現代美術っていうのは定義上にはインターナショナルなものなんですよ。地域にこだわってそこだけでやっても全然かまわないんですが、でも作る人は作る人の勝手だからいいんですけど、僕は作る人じゃなくて見る人の権利も言っていいかなって思ったんです。



注)シネマテークフランセーズ:映画に関係する全てが集められているところ。アートとしての映画を推進するため、文化省などの後援で民間団体によって運営されている。

注))プラド:スペイン大家のコレクションを持つマドリードにある美術館。

注))テートブリテン:イギリス、ロンドンにある国立美術館。

注)フェルメール:ヨハネス・フェルメール(1632-1675)17世紀にオランダで活躍した風俗画家。

注)ビエンナーレ:2年に1度開催される美術展覧会。

注)トリエンナーレ:3年に1度開催される国際美術展。

注)バーゼルのアートフェア:世界最大のスイスのアートフェア。

注)マシュー・バーニー:アメリカの現代美術家。人体をテーマにした映像作品「クレマスター」シリーズが有名。ニューヨーク在住。

注)ダミアン・ハースト:イギリスの現代美術家。“Natural History”という死んだ動物をホルムアルデヒドで保存する作品が有名。






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