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   白井良邦氏(Casa BRUTUS副編集長)  (1/2)




白井良邦氏

Casa BRUTUS副編集長
株式会社マガジンハウス:http://magazineworld.jp/




LOAPS:今年6月で、建築・デザインをメインとしたライフ・デザイン雑誌「Casa BRUTUS」は創刊100号を迎え、その記念としてスイスで6月に開催された世界で最もハイエンドなデザイン・フェア<デザイン•マイアミ/バーセル>で展示を行い、世界へ向けある提案を行いました。その提案とはズバリ「日本の30代の若手建築家5組が、メキシコシティに架空の”空想現代美術館”を構想する」というもの。では一体、この企画は、どのようにして生まれたのでしょうか?

白井: 僕は建築・デザイン雑誌の編集者ですが、雑誌づくりをしていて常日頃強く感じでいることは「日本の建築家はニッポン最大の輸出品なのではないか?」ということです。TOYOTA、HONDAやSUSHI、MANGAと並び、日本が世界に誇れるもののひとつが「日本の建築家」ではないかと思っています。ですから、プライベートジェットに乗ってアートやデザイン・アイテムを買いに世界中から超富裕層が集まるこのスイス・バーゼルでのフェアで、日本人若手建築家5組を世界に売り込むべく、このような展示を行ったわけです。

LOAPS:世界に誇れる日本人建築家というと、どんな人がいますか?

白井:例えば世界で有名美術館の設計コンペ(設計案を競う審査のこと)が行われると、そのコンペを制するのはたいがい日本人建築家です。例を挙げれば、2004年にリニューアルオープンし現在でも高い評価を受けているMoMA(ニューヨーク近代美術館)増築の設計に選ばれたのは建築家・谷口吉生でしたし、フランスで進行中の国立ポンピドゥーセンターや国立ルーブル美術館の分館建設の設計コンペを制したのは、坂茂(ポンピドゥーセンター・メス/2008年着工予定)やSANAA(ルーブル・ランス/2009年着工予定)といった日本の建築家たちです。また現代建築のトップランナーである伊東豊雄は、カリフォルニア大学バークレー校の美術館コンペを制し現在設計が進行していますし、ご存知、建築家の安藤忠雄は、中東・アブダビやアメリカ・マサチューセッツ、イタリア・ヴェネチアなど様々なところで美術館プロジェクトを手掛けています。

LOAPS:Casa BRUTUSの2007年4月号で、海外で活躍する日本人建築家の特集を組みましたね?

白井:なぜこの特集をつくったかといえば、これだけ世界中の重要な建築を日本人がデザインしているのに、日本では一般に、まったくもって報道も評価もされていないからです。例えばスポーツニュースを見ると、野球で言えばイチローや松井が、サッカーではかつて中田ヒデなど、海外での活躍が毎日のように報道されていましたよね。ある意味、日本人建築家の世界での活躍は彼ら日本のスポーツ選手と同等かそれ以上です。でも、ほとんど報道されず、評価もされていません。だから、日本国内で、もっと日本人建築家の活躍が紹介されてもいいのではないかと思っていたんです。

LOAPS:そう思うにいたった、何かきっかけとなる具体的なエピソードはありますか?

白井:以前、安藤忠雄さんと一緒に、アメリカ東海岸へ取材に行っときのことです。そこでまず驚いたのが、安藤さんに対するアメリカのメディアや美術館のボードメンバー(組織の運営委員)の対応が全然違うということです。アメリカ・ボストン郊外に<クラーク・インスティテュート>という、アート関係のキュレーターを多く輩出する名門教育機関があって、その美術館を安藤さんが手掛けているんですね。そこでの安藤さんに対するリスペクトがもう尋常じゃなかった。安藤さん以外にも、伊東豊雄さんや藤森照信さんともメキシコやヴェネチアなど海外取材をご一緒しましたが、毎回一番驚くのが、海外の人の建築家に対する接し方とその尊敬度が、日本と全然違うということです。

LOAPS:なるほど、建築家の地位が海外ではもっと高いということですね。

白井:だから僕はそのギャップを埋めるべく、日本の読者に向かって、こんなに日本の建築家は活躍してるんですよ、世界でこんなに尊敬されてこんなに立派なものを作ってるんですよ、ということ特集したんです。今回のバーゼルでの展示は、この特集の実施版です。雑誌の枠を飛び越え、最高峰のデザインフェアで、海外へ向け若手建築家を輸出しようという試みです。もし建築でワールドカップがあったら、間違いなく日本は決勝まで残るでしょう。それぐらい日本人建築家はハイ・レベルなんですから。

LOAPS:この企画の5組の若手建築家はどうやって選ばれたんですか?

白井:日本人建築家特集を組んだ時、特集最後のページに載せたのが「これから世界へ輸出したい次世代の建築家リスト」でした。これをベースにバーゼルでの展示参加建築家を選びました。世界中の主要な美術館コンペをほとんど日本人が押さえているわけですから、世界のアート&建築界から、日本人建築家は常に注目されています。そういう状況なので、僕も年4,5回の海外取材のたびに「次に注目すべき日本人若手建築家は誰なの?」と、外国人からよく質問されるんです。毎回聞かれるから、それならば質問される前にこの「What is next?」展でその答えを示しちゃおうって(笑)。

LOAPS:空想美術館の場所をメキシコに設定したのは?

白井:漠然と未来の美術館を考えてもらっても面白くないので、具体的な敷地を設定した方がいいな、と考えていました。それもそこが、ブラジルとかメキシコとか、ちょっとエキゾチックな場所ならなおいいぞ、と(笑)。そうしたらNYのある有名なギャラリストの方が、それだったらメキシコにいい土地があるよと。

LOAPS:じゃあ、その土地は実際あるんですか?

白井:メキシコシティーの中心部に、3000平米の三角形の土地があります。ここは<フメックス>という、缶詰やジュース製造で中南米で最大シェアをもっている会社のオーナーであり現代アートのコレクターとして知られるロペス氏が美術館を建てるために買った土地なんですよ。で、このフメックス側の人間と交渉し、この土地を借りてやってみようじゃないかっていうことになったんです。

LOAPS:実際、デザインマイアミ/バーゼルに参加してみてどうでした?

白井:海外からの反応がすごかったですね。ブラッド・ピットやクウェート王子もカーサの展示を見に来てくれましたよ。また実際に、何人かの建築家には海外から具体的なオファーが来ています。そのうちの一組はスイスの別荘の設計がスタートしました。他にも、今年9月に行われるヴェニスの建築ビエンナーレのディレクターである、アーロン・ベツキーが、直接編集部に連絡してきて5組の日本人若手建築家の作品リストが欲しいと言われました。先日、全員の作品リストを送ったところです。世界中でコンペやると日本人が勝つから、建築関係者は日本の若手建築家に注目するんですよ。

LOAPS:成果があったってことですね。

白井:繰り返しになりますが、僕は「日本の建築家って最大の輸出品だ」と思っているんです。ただ、トヨタの自動車とかヤマハのバイクとは違って、「建築」は日本のアニメみたいにどんどん相手の”文化の中””心の中””思想の中”に浸透して行くものだと思うんです。だから、より重要な文化的輸出品だと思っています。建築って実際にそこに建ってみんなが利用して、思い出ができたりいろんな体験をしたり、記憶に残っていくようなものですからね。ですから僕自身も編集者として、ただ単に商業雑誌をつくっているという考えではなく、つまり売上を伸ばせばいいやとか、自分の雑誌だけ注目されればいいやとかではなくて、「カーサ」という建築や日本の文化に関わる雑誌をやってる以上、雑誌の枠を飛び越え、同じ志を持つ人たちと協力し、どんどん外に対して提案して行きたいなと思っています。

LOAPS:バーゼルでの展示は、これからどういう展開になるのでしょうか。

白井:バーゼルでの展示終了後、模型などは全部メキシコに送って、早ければ来年に、メキシコシティの近代美術館かタマヨ美術館のどちらかでこの展示を再びやる予定です。さらにメキシコシティーの土地のオーナーであるロペス氏が若手建築家の案のいずれかを気に入れば、そのうちのどれかが建つかもしれません。とりあえず、メキシコで展覧会をやり、その次は東京にもこの展示を凱旋帰国させたいですね。東京デザイナーズウィーク期間中に合わせてやるとか。


LOAPS:今後も気になりますね。日本の建築の「今」についてお聞きしたいんですけれど、Casaの100号記念を拝読して、日本の建築家がこれだけ海外で活躍していてすごくびっくりしました。日本の建築家が海外の建築家と違う点、どうして日本の建築家がこんなに評価されてるのかすごく不思議に思ったんですけれど。

白井:やっぱり建築に対するアプローチの仕方が、西洋人と日本人では全く違うと思います。例えば、ヨーロッパに行くと石造りの文化ですよね。日本って木造の、ヨーロッパと比べると存在感の軽い、台風があって壊れちゃったらまた建て直すとか、もしくは伊勢神宮の式年遷宮みたいに20年経ったら隣の土地にまた同じ型の新しい建物を建て、それを永遠と繰り返すとか。ちょっと変わった文化が根本的にあって、それが設計のプロセスとかに出てくるんじゃないかなあと言うのが僕の推測です。まあすごく概念的な話なんですけどね。

LOAPS:具体的な話はありますか?

白井:先ほどお話したバーゼルでの展示の後、二日だけお休みとって一人でドイツのケルンにいったんですよ。なんでケルンに行ったかというと、ピーター・ズントーというミステリアスな建築をつくるスイス人建築家がいて、その最新作である<コロンバ>という美術館があったからなんですね。これが僕の周囲で話題になっていて。100号の美術館特集でこの美術館の特集記事を作ったんですが、実は特集しておきながら自分で一回も見たことがなかった(苦笑)。で、せっかくだから行ってみようと。 LOAPS:どんな美術館でしたか? 白井:ここは昔、大きな教会が建っていて、その教会が出来る前はローマの遺跡が残っていた。その教会の上に覆いをかぶせるように、ピーター・ズントーが現代アートの美術館を作ったんですね。この建築を見て感心したのは「こういう建築は日本人には作れないな」ということです。これは石造りの文化圏の人間のなせる技だと。きっちりした重たい神殿や宮殿を作ってきた末裔だからこそ、こういったものが作れるんじゃないかなっていう・・・すごい神秘的は空間なんですよ。日本で言うと安藤忠雄さんみたいな建築家はこういった重厚で静謐な空間を作れるかもしれませんけれども、伊東豊雄さんとや妹島和世さん、坂茂さんなんかは、いい空間をつくる建築家ですけれども、こういったズントーがつくるような石づくりの重たい性質の空間ではないんですね。もっと自由で開放的で・・・たぶんそれが日本の伝統的な木造の家屋で、障子を放てば外と一体になってしまうようなものと通じるから、逆に海外の人は、伊東さんや妹島さんの建築に、僕がズントーの空間に感じた神秘性とは別の神秘性を感じるんじゃないかな、と僕は解釈してるんですけれど。

LOAPS:じゃあ、これから新しい若手の建築家を発掘しようとしたら、日本の文化を根底に感じさせるような、海外から評価されるような建築家を探して行きたいっていう感じなんでしょうか。

白井:いや、それは全然意識してないんですよ。優秀な建築家ほど、日本らしさを前面に出そうとはしていないと思います。でも、知らず知らずのうちに日本らしさがにじみ出ちゃう。例えば僕の話し方とか、物事の考え方とかも、僕は日本っぽくしようと思ってないんですけれども、日本人らしさが出ちゃう。僕がバーゼルで展示の説明を外国人にしていたときもきっと、相手に「この人日本人っぽいな」って思われていたと思うんですよ。僕の身振りや表情とか、一生懸命、苦手な英語で説明しようとする態度とか(笑)。日本人は一般的に欧米人と比べて、人当たりがソフトでニコニコしていて、謙虚で親切。そういう身に染み付いた日本人らしさが自然と相手に伝わっちゃう。だから、建築家の人もそれと一緒で、作品に日本らしさが自然とにじみ出ちゃうと思うんです。アイデアを出すということは、自分の内面の奥底に沈んでるものを取りにいって、それを形にする。その過程で日本っぽさ、外国人が感じる日本っぽさっていうものが自然と味付けされちゃうんだと思います。逆に日本ぽさを意識し過ぎて作品に出しちゃうと、いやらしい日本っぽさ、なんちゃって和モダンみたいなものになっちゃうと思うんですね。それはファッションの世界でも、アートの世界でも、日本を売りにしてる人っているじゃないですか(笑)。それってあんまりかっこいい日本っぽさじゃないですよね。どの世界でも日本人が評価されてるのは、そういう言葉とか目で見えるわかりやすい日本ぽさではないと思います。だから、僕のなかでは日本ぽさというのはあんまり意識していません。

LOAPS:日本らしさっていう基準を気にしないならば、新しく発掘する建築家に求められているものっていうのは、どんなことなんでしょうか。

白井:たぶん、一言でいうと独創性。やっぱり誰かのマネとか、なんちゃってじゃないっていうところがすごいポイントだと思っています。僕が今回選んだ若手建築家5組もすごく独創的で、彼らにしか作れないものを作っていたんです。今回もバーゼルで、同じ敷地で同じ条件で美術館を構想してもらっても、全員がまったく違う案、なるほどなって唸るものを作ってきたんですよ。ちなみに、バーゼルでは、会場に来てもらった人にどの美術館案がよいか、投票してもらいました。結果は、一位はダントツで平田晃久さんの案でした。二位はマウントフジでしたね。3位以下はみなほぼ同数でした。

LOAPS:白井さんが個人的に、興味深かった案はどれですか?

白井:マウントフジの案ですね。これはすごく面白くて、まず穴を掘るんですよ。普通コンクリートで建てる時は、型枠っていう枠を作って、そこへコンクリートを流し込んでコンクリートが固まった時点で型枠を外すんです。そうすると壁や柱が出来るわけです。でも、この案は違っていた。地面に穴を掘り、そこにコンクリートを流し込むんです。で、固まったらクレーンでコンクリートを立ちあげるんですよ、壁を。つまり型枠を使わずに地面を型にしてつくるんですよ。で、地面には綺麗に壁の形が空きますよね。そこがそのまま展示スペースになるんです。だからパズルみたいに穴と壁が合っている。それがいっぱい組み合わさって空間をつくる。もともとマヤ文明など、メキシコ一帯には巨石文明がありましたよね。その巨石文明のコンテクスト(文脈)にもちょっと掛けていて、建築をつくるプロセスから楽しむっていうもの。まあ、建築というのはプロセスっていうよりは、それが出来てからどう使われて行くかっていうのを結構みんなプログラムするんですよ。でもマウントフジに関しては、作るプロセスと、それからコンテクスト、歴史的文脈もマヤ文明までもっていってる。

LOAPS:このLOAPSっていうサイト自体が、これからアート関係、クリエイターになりたい人たちが多いので、そういう人たちがこれから勉強して行くために、こういうものを見た方がいいものはありますか。

白井:Casaはとりあえず読んだ方がいい(笑)。それと、あるエピソードを紹介します。それは台湾で安藤忠雄さんが講演をやったときのことです。スタジアムに1万人を集めレクチャーした後、マスコミ向けの記者会見があって、そこで安藤さんが台湾のマスコミからこんな質問を受けたんです。「これから台湾はどうしていけばいいですか?」って。そうしたら安藤さんが、「それは私が答えることではなくて、あなた自身、台湾の人たちが考えることです」って答えたんですよ。この答えには、はっとさせられましたね。だから今の質問に対する答えはなくて、やっぱりそれを探して、探し出せた人だけが成功すると思うんです。とりあえずCasa読んだりとか、Casaに載ってるような建築とか、今回も僕がケルンまでズントーの美術館を見るためだけに行ったりとか、そういう日々の努力は当然大切なんです。けれども、それをやれば必ず成功するとは限らない。日々の努力プラス、さっきも言ったように独創性、なにか人と違うことを、なんでもいいんですけど見つけられれば、成功したり、有名になれると思います。そのためには、よく考えることです。よく考え、それが見つけられない、思い浮かばない人は、人並みで終わっちゃう。

LOAPS:ちょっとまた話が変わりますが、独創的な日本の建築家がたくさん世界で評価されている一方で、一般の人たちが建てている住宅って結構つまらない同じような住宅が多いと思うんですけど、そういうギャップって縮まらないんですかね。

白井:縮まらないですよね。でも、今年でCasa創刊10年ですけれど、建築とかデザインがより一般的になりましたよね、10年前に比べると。だってBRUTUSで15年くらい前に初めてイームズの特集をやって、その頃はまだ「イームズって何?」ってみんな思ってたけど、今イームズの特集やっても本が売れないくらいみんな知っている。あと六本木ヒルズのTSUTAYAとか行っても、カップルで建築の本を一緒に読んでいたりとか。そういう風景は10年前では考えられなかった。そういう意味では、みんなの認識って今後もっと変わっていくんじゃないですかね。もちろん、ファッションでも、おしゃれな人とそうじゃない人のギャップって相変わらずありますよね。それと一緒で、建築も最先端のモードみたいなのも建築にはありますけど、全然モードから外れた層というのが大半なので、その人たちを変えていくっていうのはやっぱりちょっと大変なことなんじゃないですかね。

LOAPS:それでも、例えば自分で家を建てる時に、建築家に依頼するっていう人たちも少しずつ増えて行きますよね。

白井:やや増えてるんじゃないですかね、都市部を中心に。

LOAPS:素朴な質問なんですけど、普通の人がCasaに載ってるような建築家に家の設計とかって頼めるんですか。

白井:頼めますよ。あと、この間も別の場所で質問を受けたんですが、5000万円の家をベテランの安藤さんや妹島さんに頼むのと新人の建築家に頼むのは、やっぱり安藤さんとか妹島さんの方が値段が高いんですよねっていうんです。でも、建築家の設計費って、だいたい相場として総工費の15%って決まってるんですよ。新人に頼もうが有名建築家に頼もうが15%なんです。ま、有名建築家が家の設計を受けてくれるかどうかは別ですけれどね(笑)。でも変な話ですよね。普通の世界だったら料金が同じってあり得ないでしょう。レベルが違うのに値段が一緒って。そういうちょっと変わった世界なんですよね、建築って。

LOAPS:また話は変わりますが、自分が他人にどう見られているか、気にすることは大切なことだと思いますが、建築家の方はどうですか?

白井:例えば、安藤忠雄さんがすごいと思うのは、どんなに有名になっても、<カーサ ブルータス>で自分の特集が出たとき、どのくらい売れているのか、読者の反応はどうなのか、ご自分で確認されるんですよ。本屋さんに出向いたり、編集部に電話したりとかして。あと、読者サービスのためわざわざ会社に来てくれて特集号にサインを500冊とかしてくれるんです。安藤さん自ら会社まで来てくれて、下の会議室で。どう自分が見られてるのか、あんなに有名になった後でもすごく気にする。自分が出た特集が売れないってのは、やっぱり評価されてないっていうことだから。六本木のミッドタウンにできた美術館<21−21DESIGN SIGHT>の安藤忠雄展のときも、ふらっと現れて来てくれたお観客にサインしてあげたりとか、すごいサービス精神というか、気遣いがありますよね。あの姿勢はすごいと思います。

LOAPS:それはこのLOAPSを読んでくれている若いアーティストに向けて伝えたいことですね。その場としてLOAPSを使って欲しいし、建築家を目指している人も白井さんに見られるような機会をどんどん作ってもらったらいいですね。

白井:毎日、編集部に結構数多くの、売り込みの資料が送られてくるんですよ。日本に限らず、海外などからも。でも僕は絶対にすべての資料に目を通していますよ、必ず。有名な事務所の紹介じゃなくても編集部に資料送ってもらえば必ず見ています。忙しくても。まあ、正直言って、売り込みのほぼ9割5分は採用できないんですけれども、100枚来たら、3枚くらいはキラリと光るものがあるんですよ。

LOAPS:それを見つけたらどうするんですか?

白井:それが例えば住宅ネタだったら、年1回の住宅号までとっといて、住宅号で声をかけるとか。また、面白い話があれば即電話してコンタクトとったりとか。つねに情報収集のアンテナは張っています。

LOAPS:編集部に売り込む以外に、世で認められるきっかけをつかむ方法はありますか?

白井:例えば藤本壮介さんなど、今注目の若手建築家のサイトを見てみると、随時インターンを募集してますよ。そういうところに応募して、建築家事務所でバイトやお手伝いをしてみるっていうのはどうですか?建築学科の学生たちは、みんなそういう事務所で修行しに行くんですよ。建築の専門学校に行ってる人たちも、インターンで事務所に入って、プロジェクトを手伝ったりとかいいですね。そこで同じ志をもつ友達ができたり、有名建築家の仕事を覚えたり。いきなり建築事務所には入れないから、そういうふうに建築家のサイトをチェックして入り込む。建築家になりたいんであればそれがいいかもしれないし、アーティスト志望の人でも、建築事務所に入っても面白いかもしれないですね。最近、現代美術作家の杉本博司さんは、自ら建築事務所を作って建築家としての活動を始めたりと、アートと建築の領域がますますボーダーレスになってきていますから。だから、アーティスト志望の子が建築事務所でインターンやるっていいと思いますよ。アーティストのインターンやるよりも建築事務所でインターンやった方が作品に幅が出ますし、人脈も広がるし。また美大でない、普通の大学の文学部などに行ってる人でも建築事務所で働くっていうのは結構刺激的かもしれませんよ。

LOAPS:そういうの面白いかもしれませんね。提案として。

白井:建築学科の人が建築事務所でインターンやるって当たり前ですし、あんまりこう広がらないけど。僕がまた学生に戻るんだったら、建築事務所でバイトするかインターンとかやっちゃうかもね(笑)


つづく

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